出窓なもコラム第4回「オタクから貰った花は腐らせるに限る」

私は自分を応援してくれている人たちのことを、積極的に「オタク」とは呼んでいない。
しかし、この呼称は一般的に浸透している。特に自称する時には、ある種自虐的な意味を含んでいることが多い気がする。

これは、私の「オタク」たちの話だ。

オタクから貰った花は腐らせるに限る

私は数年前メイドさんの魔法にかかって、あるお屋敷でお給仕していた。たしか、半年と少し。
決して長くはない。それでも卒業する時には立派なフラスタやら花束やらプレゼントやら、盛大に送り出していただいた。


萌え萌えキュンなオムライスと筆者

「でまどちゃん」というメイドさんが消えた後も私は「出窓なも」としてインターネット世界に存在していたから、何人かの「オタク」は「出窓なも」のアカウントを見つけてくれた。 
そこで、中心となって卒業式の準備をしてくれたあるオタクから長々としたDMが届いた。  
その中にこんな内容があった。

「メイドさんたちは裏では、入れたお酒のボトルの名前でオタクを呼んでるらしいね。だとしたら俺は〇〇だったのかな?笑」

こんな調子の自嘲的なリプやらDMが次々届く。まったく、どいつもこいつも。

ちなみに、先のDMを送ってきたオタクはその後アイドルになった私のお披露目ライブに来て「まあ今までみたいに毎回とはいかないと思うけど時々様子見にくるよ」と言い、それ以降現場にもSNSにも姿を見せなくなった。私以外に特に推している子もいないような人だったから、本当に消息不明だ。

私はお前のことを酒の名前で呼ぶどころかオタクネームで呼ぶどころか本名まで覚えているよ。最寄駅も覚えてるよ。この間は誕生日だったねおめでとう。

そう。私たち「推される側」は、「オタク」たちのことを「オタク」なんて呼びながら、「オタク」という集合体だなんて思ってないんだよ(あえて私「たち」と言い切ってしまった。他の推され人たちの愛を信じているから)。

これは、目立つオタクに限った話でもなければ、大金を積んだオタクだからでもない。
私は知りうるオタク全員の誕生日をカレンダーアプリに入れているし、一回でも現場に来てくれたオタクの特徴や好きなことをメモに残している(まあ、これは私の記憶力が弱いというのもあるのだが)。


オタクの誕生日コレクション

ちょっと気持ち悪がられてしまうかもしれないけれど、私はオタクに頂いたものを一切捨てることができない。

差し入れのペットボトル飲料も、飲まずにとっておいている。もう4年経つだろうか。
一番困る(語弊がある)(お花大好き)のはお花だ。私は頂いたお花を全てそのまま保管し腐らせ、なお捨てられない。いい加減にものすごい量の腐敗花が溜まってしまい、部屋に死番虫という小さな虫が湧いた。


腐敗花

(仕方なく)作品として昇華すべく、アイドル時代の生誕MV内でその時あった全てを燃やしたのが、唯一の処分エピソードかもしれない。


出窓なも「葬」MusicVideo
https://youtu.be/BQupv3NjvHI?si=S1alLk4IQ-rMaIlH

流石に他の推され人はここまで物体に執着することはないとは思うが、少なくとも頂いたものを気に入らないからといって心を痛めもせず捨てる人はいないんじゃないかと思う。

アイドル時代、現場回しの合間の車内やライブ後のご飯では、「今日〇〇さん来なかったね」、「最近いないよね、どうしたんだろう」なんて話は必ず出た。
動員10は動員10ではなく、一人ひとりの集合体10なのだ。

ちょうど一年位前、私はアイドルを辞めて以来一度だけステージに立った。そこには、コンカフェ(的なお店)、メイドカフェ、アイドル、文春(文春のインタビューを受けたことがあります)、さまざまな時代に私に出会ってくれたオタクたちがいた。

ステージに立った瞬間、一人ひとりが一人ひとりすぎて、それぞれとの思い出や思い入れがひしめき合いすぎて、その濃度に眩暈がした。狼狽えてしまった。

もちろんたくさん現場に足を運んでくれたりリプライを送ってくれた方が覚えやすいというのは、ある。

ただ、そういう次元ではない話として、私たち推され人は、オタクたちを一人ひとりとして認識しそれぞれと一対一の関係を築いているのだ。

 

「オタク諸君、分かってるか?」

 

私はたびたびお酒の失敗をしていつも手が震えていたお前のことを、私じゃない子の方が好きになっちゃった君のことを、私の不器用さで見損なわせてしまったあなたのことを、私の前から消えてしまったオタクたちのことを、ずっと未練タラタラに思い続けているよ。

もちろん、いなくなってしまったオタクだけではない。応援してくれているオタクに対してなんて並々ならない大きさと複雑さの感情をもって接している。

私たちはオタクに対してとことん受動的な存在だ。呼びかけることはできても会いにいくことはできない。やっぱり歪な関係だ、と思う。

それでも、そんな関係も愛おしもうじゃないか。
目は合っている。声は届くのだから。

金を出しているんだからとお説教オタクになれと言っているんじゃあない(重要)。

ただ、あなたはきっとあなたが思っている以上に、推しの前でたった一人の人間なのだ。

 

このコラムは、コラムではないかもしれない。
これは、私から全てのオタク、そしてあなたへの手紙であって祈りである。

送りつけてきたDMの話なんて公にしちゃいけないと思うけど、これはこんなに私に心配させているお前が悪いんだからな、公開処刑です。
絶対、私のいないどこかの世界で、元気に生きていてくれよ。

 

著者情報:出窓なも
心理学科卒、一年半留年し、現在社会人一年目。
「魔女」と呼ばれるなど順風満帆ではない大学生活を送る。学外に居場所を求め、チェキの撮れる定食屋、メイドカフェ、ミスiD、地下アイドルなどさまざまな場所を転々とする。
好きなものはパッションフルーツ。苦手なことは蝶々結び。

 

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