大箱のワンマン公演となれば、普通はワクワクとその日を待ち侘びるものだが、真っ白なキャンバスのファンにとっては、「この日が楽しみでもあり、その一方で来てほしくなかった……」とも言える、2024年11月4日。
「真っ白なキャンバスは、11月でグループを解散します」と衝撃の発表を行い、ライブアイドル業界に激震が走った5月22日。2017年のデビュー以来、紆余曲折を経つつも、つねにシーンの先頭を走ってきた白キャンが、その歴史に幕を閉じる。この日を見届けようと、幕張メッセイベントホールには開場前から多くのファンが、それぞれの想いを胸に集った。
ライブ模様をお届けすると共に、大量のライブ画像ギャラリーで、真っ白なキャンバス ラストライブ『明日も変わらない1日を』の模様を未来に遺す。
テキスト:川西わたる
撮影:矢沢隆則、ケン木村
真っ白なキャンバス ラストライブ『明日も変わらない1日を』
白キャン史上最大規模のアリーナ級ライブとなったラストライブ『明日も変わらない1日を』。
ホール内は歴代衣装や大型パネルを展示、通路には数えきれないほどのスタンドフラワーが飾られ、いかに白キャンが皆から愛されてきたかを物語る装飾となった。フロアはメインステージの両脇から花道が伸び、四角いセンターステージが取り囲む、スペシャルなレイアウト。
2017年11月18日恵比寿CreAtoにてデビューてから7年間、ライブアイドル業界を牽引してきた歴史が観れる。
最前方をVIPエリアとSS席、センターステージ挟んでS席までをスタンディングエリアとし、アリーナ後方は撮影可能なカメラ席、着席エリア、そして2階にはスタンド席が広がるが、どこを見渡してもほぼ満員。観衆から発せられる熱気だけでなく、寂しさや感謝といった想いが渦巻く、不思議なエネルギーに満ちていた。
ラストライブが開演
ほぼ定刻通りに開演。メンバー紹介のVTRが終わるとステージには7人の姿が浮かび上がる。「最後の1日、最高の1日にしましょう!」と小野寺 梓が叫び、爆裂音とともにステージへ飛び出すメンバー。オープニングは『アイデンティティ』だ。この日のために用意された衣装は、まさに“純白”。お揃いの2ピースのセットアップは、フリル付きのブラウス&ベストをトップスに、下はショートパンツとロング丈スカートのレイヤード。白さにこだわるため、ボタンや金属類も白にペイントされているそうで、清楚感とセレモニアル感のあるスタイル。全員個別にアレンジされた髪飾りも真っ白で統一した。
「最強で最高で、今までにないような時間を作っていきましょう!」と三浦菜々子の煽りから『闘う門には幸来たる』。「飛ぶよ!」の掛け声からファンが跳ねる恒例のアクションもビッグスケール。曲間ではスモークが上がって気分を盛り立てる!
ライブ定番のアッパーソング『白祭』のイントロが流れると大歓声が沸き、熱いコールにメンバーの目にはうっすらと涙が…。最初のブロック最後は『Heroism』で、曲のアウトロ部分では、浜辺ゆりなから順に一言ずつ挨拶を挟んだ。
イメージ映像を挟んで次のパート。お馴染み『HAPPY HAPPY TOMORROW』では、トロッコにメンバーがひとりずつ乗って、二手に分かれて移動。アリーナから2階スタンド席の隅々にまで大きく手を振ってファンの歓声へ応えながら広い場内を一周するという、ホールライブならではの大掛かりな演出が映える。
曲終わりでそのままセンターステージへ単身現れたのが、麦田ひかる。ソロダンス披露からメンバーが揃い、『Whatever,happens,happens』がスタート。2022年にフリーライブで披露されたアレンジで再現、これに一糸乱れぬコールで応えたオーディエンスとの一体感に鳥肌が立つ。
ここから一転してエモ系パートに入り、『レイ』『モノクローム』『世界犯』と、白キャンらしい世界観の「孤独な感情」や「揺れ動く不安定な気持ち」を綴ったメッセージがスクリーンに投影されると、聴衆もその歌詞を噛み締めながら、聴き入っていた。
新衣装で登場
ステージが暗転し、再びイメージ映像へ。ライブ再開は、白キャンには珍しい、底抜けに陽気なパーティチューン『ポイポイパッ』。なんとメンバーが、この幕間で瞬間移動。2階席の扉から登場するというサプライズで、そのままカラーボールを投げ入れるファンサービス。これにはスタンド席のファンも大騒ぎとなった。
橋本美桜と小野寺 梓だけは花道からのボール投げ入れだ。さらに間奏では、西野千明、鈴木えまから順にバズーカの長距離砲でボールを遠くまで飛ばし、最後は白いボールをメインステージから一斉に投げ込んで、ラスサビに突入。はちゃめちゃに楽しい時間となった。
ここから加速するかのように、ライブのマスターピース『ダンスインザライン』がスタート。ひとつ目のクライマックスに突入するべく、人気曲『オーバーセンシティブ』でたたみかける。何度聴いてもゾクゾクするようなイントロでは、火花が噴き上がる演出も効果的。強烈なスカビートに乗せて、メンバーもファンのボルテージ最高潮に達した。
激しいスモークの中、続いて披露したのは、特別アレンジを施した『わたしとばけもの』。グループカラーと対極にある漆黒コスチュームに身を包んだダンサーが、その対比のようにステージをサポートした。ドラマチックなパフォーマンスで魅了するとステージは暗転し、ブレイクタイム。
フラッシュバックのように過去映像が流れ、この間にメンバーは、腰の大きなリボンとゴージャスなドレス風の衣装にお色直しして再登場。初めの衣装と同じく白ベースながら、卒業式をイメージした「袴」風のエッセンスや、未来へ羽ばたく「ネリネ」の花をモチーフにしたワッペンなども取り入れられているフォーマルなもの。
ラストソングとして発表されたばかりの『今日がとけたら』では、「また会おうね」という再会の約束メッセージが胸に突き刺さった。切ない『空色パズルピース』、青春ソング『キャンディタフト』と続き、センターステージに移動した小野寺が、目標としてきた幕張のステージに立てる喜びを述べた。「来年も再来年も一緒に〜」の歌詞が、今日でお別れという現実のギャップとシンクロして、涙腺崩壊寸前だ。
最後の『SHOUT』
そのまま、この日の特別アレンジの『SHOUT』のイントロが流れる。心の準備をする幕張メッセの全員がそのメロディに耳を傾ける。小野寺梓が「これが最後のSHOUTです。みなさん本気見せてください!」と声す震わせて叫ぶ。
白キャンの代名詞となったこの名曲で、全員がすべてを出し切ろうとピークの盛り上がりとなったのはいうまでもなく、この曲がもうライブで聴けなくなるという思いからか、最後の瞬間を自分のスマホで収めようと必死にカメラを構えるファンの姿も多く目についたのが印象的だった。
ここまでトークなしでパフォーマンスしてきた、圧巻の17曲。ようやくゆっくりとMCタイムに入り、スマホ照明の点灯をお願いして、白いライトの海が広がったフロアをバックに記念撮影も。三浦菜々子がついに最終ブロックに入ることを告げると『Heroine hour』を披露。『共に描く』では再度トロッコにメンバーが乗り、会場内を移動。みんなに近づいて最後のご挨拶とばかりに、あらゆる場所まで大きく手を振り続ける7人。
「みんなで一緒に最高の空間を作っていきましょう!」と西野千明の煽りから、夏曲『いま踏み出せ夏』をセンターステージで全力パフォーマンス。間奏で花道移動からメインステージへ戻ると、落ちサビの肩組みフォーメーションでは、フロア中も一体となってファン同士が左右へ揺れる光景に心を打たれた。三浦菜々子が涙をこらえながら、本編最後となる卒業ソング『桜色カメラロール』を紹介すると、「もう会えなくなってしまう」という切ない歌詞がオーバーラップして涙が溢れてくる。落ちサビではステージにたくさんの花びらが華やかに舞い降りて、新しい門出を祝うような演出となった。
本編パートはこれで終了だが、まだまだ別れたくないファンから、一体となったアンコールの声が響き渡ると、そのラブコールに応えてセンターステージに再登場したメンバーは、ラストライブ用グッズとして作られたTシャツを羽織っている。
「この愛おしい空間をまだまだ味わっていきましょう!」と橋本美桜のメッセージから始まった『全身全霊』では、過去の同曲のライブシーンが投影されて見事にシンクロ。ライブのエンディングあたりで披露することの多かった『自由帳』は、明日への希望や未来を予感させてくれるポジティブな歌詞に強く心を打たれる名曲。
メンバーからの手紙
「メンバーの気持ちを一人ずつ手紙にしてきたので披露します」と三浦菜々子がアナウンスし、まずは浜辺から読み上げる予定だったが、なんと浜辺の封筒の中に入っていた紙は「白紙」というアクシデント……。これにはしんみりムードから一転して爆笑を誘ってしまったが、気を取り直して、順番に手紙を読んでいく。
浜辺ゆりな
たくさんの幸せをくれてありがとう。ステージの上から見る景色、大きな声で呼ばれてみたかった自分の名前。どんな時もファンのみんなが味方でいてくれたから、憧れだったアイドルになることができました。元々、白キャンのファンだったので、加入当時は緊張してたけど、今では大切な仲間です。4年ほどこのメンバーで活動し、アイドルができたことが幸せです。
西野千明
もうライブできなくなるのは寂しいけれど、メンバー7人がぞれぞれステップアップできる、いい機会だと思っています。何か辛いことがあったら白キャンのことを思い出してくれたら嬉しいです。いつでもみんなの味方です。ダンスも歌もまったくできなかった私が、ここまで続けられたのもみんなやメンバー、支えてくれた方々のおかげです。
橋本美桜
向いてないと思っていたアイドルでしたが、たくさんの方に支えられて続けることができました。私にとって、唯一すがりたくなってしまう存在が白キャンでした。みんなからもらった愛を胸にこれからも進んでいくので、橋本美桜を見守っていてください。不安にさせてしまった時期もあったけど、今日までたくさんの愛をありがとうございました!
三浦菜々子
ライブ中にみんなが見せてくれる笑顔、特典会でかけてくれる温かい声に、何度も救われてきました。白キャンに入って、自分の思いをぶつける難しさ、逃げずに立ち向かう大切さ、同じ夢を追いかける楽しさも知ることができました。みんなと描いてきた景色は、これからも私にとって宝物です。この先、私たちの曲がみんなに寄り添ったり、背中を押したり、支えになっていけたら嬉しいです。
麦田ひかる
家族の次に長い時間を共に過ごしてきたメンバーと、泣いたり笑ったりぶつかったり、たくさんの思い出が作れて幸せです。いつも応援してくれるファンのみなさん、運営さんスタッフさん、関わってくれたみなさん、楽曲や衣装に振り付けたち。すべてが愛おしいです。いつまでも白キャンがみんなの味方でいられますように…。麦田は変わらず、長生きを目指します!
鈴木えま
一度は夢を追うことを諦めてしまった私ですが、また迎え入れてくれて、夢を叶えることができて、ここに立てていることを誇りに思います。このメンバー7人で今日を迎えることができて幸せです。白キャンという最高のグループを見つけてくれて、好きになってくれたみんなは最強です。これからも自信を持って生きていってください。白キャンは、ずっとみんなの心の中の居場所です。
小野寺 梓
その頃、絶望していた私が応募したオーディション。一度は不合格だったけど、もう一度呼ばれて結成したのが、この真っ白なキャンバスでした。「アイドルへの執念」だけは負けてなかった私、「やるからには絶対にでっかいステージに立つ!」と人生をかけて臨みました。7年もかかってしまったけど、こうやって幕張メッセまできました。趣味を仕事にすると上手くいかないと言われますが、私は今でもアイドルでいることが大好きです。これも、みんなが私のアイドル人生を幸せにし続けてくれたからです。白キャンが私を救ってくれたように、7年間で私も誰かを救うことができていたら嬉しいです。
“真っ白なキャンバス”へ
「7人の気持ちを聞いてくれてありがとうございます。最後まで真っ白なキャンバスの姿を見届けてください」と小野寺の曲振りから、ラストナンバー『PART-TIME-DREAMER』。落ちサビのブレイクで銀テープがフロアいっぱいに舞い飛んだ! そして曲が終わると何も表示されていない、”真っ白なキャンバス”となったスクリーンへ吸い込まれるようにステージを後にした。
スクリーンに「また会おうね。」の文字が投影されると、受け入れたくないと思いつつも、ついにお別れの時間がやってきてしまったことを悟るオーディエンス。
この日を最後に、もう白キャンのライブを見ることはできなくなるけれど、みんなの心に白キャンは生き続け、残した名曲の数々は、聴き続けていかれることだろう。きっとどこかで「また会える」ことを信じて……
セットリスト
- アイデンティティ
- 闘う門には幸来たる
- 白祭
- Heroism
- HAPPY HAPPY TOMORROW
- Whatever,happens,happenes
- レイ
- モノクローム
- 世界犯
- ポイポイパッ
- ダンスインザライン
- オーバーセンシティブ
- わたしとばけもの
- 今日がとけたら
- 空色パズルピース
- キャンディタフト
- SHOUT
- Heroine hour
- 共に描く
- いま踏み出せ夏
- 桜色カメラロール
- 全身全霊
- 自由帳
- PART-TIME-DREAMER
――アンコール――