ミュージカル『浜村渚の計算ノート』出演の井上小百合へ単独インタビュー

井上小百合

2023年‍8月26日(土)福岡のキャナルシティ劇場から始まる、ミュージカル『浜村渚の計算ノート』。
その後、大阪、名古屋、東京と公演される。

物語は、日本政府が「数学をはじめとした理系の科目を学校教育から外す」ことを宣言したところから始まる。
その制度に反対するテロリスト集団『黒い三角定規』が次々と、とある数学の法則に従い事件を起こす。
そこで、警視庁が数学を愛してやまない中学2年生の浜村渚に協力を要請する。テロ組織と対峙するなかでの渚の成長は、 同級生や大人である刑事たちにも前向きな力を与えていく。

そんな『浜村渚の計算ノート』に、テロ組織の一員キューティー・オイラーとして出演する井上小百合に、単独インタビューをおこなった。

映画「スウィングガールズ」に憧れて

推:読者の皆さんに向けて簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?

井上小百合です。埼玉県出身です!
趣味はたまにテナーサックスを吹くことで、本当にたまーにチャリティーでライブを開催したりもしてます。

推:製作発表で、学生時代吹奏楽部とおっしゃってましたね。
はい、吹奏楽部でした。

井上小百合

推:その頃からずっとサックスをやられていたのですか?それとも学生時代は別の楽器をやられていたのですか?
小学生の時は音楽的な部活動が器楽クラブっていうのしかなくて。
なので、しょうがなく器楽クラブに入って、お琴とかオルガン、ピアノとかをやってました。

でも本当はスウィングガールズっていう映画を見て、それにすごく憧れて、ずっとテナーサックスを吹きたくて。
中学に入って念願のテナーサックスができた感じです。

推:そこからずっとサックスをやられてらっしゃるのですか?
高校を卒業してからは、仕事も忙しくなって全然吹けていなかったんです。
けど、コロナ禍になり「もう一回ちょっとやってみようかな」と思って、十年ぶりに楽器を取り出して教室に通ったりして、また始めてみました。

推:久々にやると楽しいですよね。
楽しいですね!!
でも、学生時代はみんながいて合奏ができたから楽しかったんですけど、今は1人で吹いてるだけなので、仲間が欲しいなって思い始めてます。

推:では、今までに培ったつてで「みんなで一緒に」と募集したら集まりそうな気がしますけどね。
集まってくれますかねぇ~?(笑)

井上小百合

 

アイドルと女優の共通点と相違点

推:以前はアイドルとして活動されて、その後本格的に女優さんとして今も活動されていますが、アイドルのステージと女優の舞台で共通していると思った点はありますか?
やっぱり見てくださった方が勇気をもらって帰ってくれたり、笑顔になってくれたり、明日も頑張ろうと、人に何かを与えたり、心を動かすことができるっていうのは表現者として共通しているのかなと思っています。

推:やっぱり人の気持ちを動かす事は簡単にできるものではないので、影響を与えられるのはすごいなと思います。 では逆に、両方やってみて違った点はありますか?
アイドルの表現だと、私の解釈では「どんな時でも元気に歌って!明るく踊って!」みたいなのがモットーだと思っています。
自分がどんなに疲れていたとしても、ステージでは絶対にそれを見せないし、弱っているところもファンの人には探られないように元気に振るわなきゃ、と思っていました。

けれど、役者として舞台に立つ時は、その役の中での心情を吐露しないといけないのが逆にすごく難しくて。
人前で泣くとか、大きな声を出すとか、マイナスの感情は隠すことが自分の中で癖になっちゃってるかもしれないなと感じるところがあったりします。
そこが「難しいな」と思っています。

井上小百合

推:アイドル活動をしている時に、役者としてネガティブなことを舞台上でやる役だったら、気持ちの切り替えとかがすごく大変そうですね。
そうですね。
でもよく「小百合ちゃんはどこにスイッチが入ってるの?」って聞かれることがあって。
なんかスイッチがあるみたいですね(笑)

推:そのスイッチは意識はしていますか? それとももう無意識で切り替えているのですか?
全く意識してないですね。
でも、すごく考えます。

役については、そんなに考えなくて良いのではないかな? ということもすごく深掘りして。時代背景やその周りにいた関連している人物を全部書き起こしたりします。

すごく考えすぎて、空回りしちゃうときもあるんですけど(笑)

推:役作りを本当に深くまでずっとやられるタイプなのですね。
すっごく考えちゃいます。

 

キューティー・オイラー役につて

推:今回、キューティー・オイラー役が決まった時は、どんな気持ちでしたか?
若い子たちがすごくキラキラした作品だなと思ったので、「その中で自分がどういう存在でいれるかな」っていう不安はありました。
今までの作品では、自分が年下側だったり、支えてもらう側だったりして、先輩方がいてくれたから頑張れていたなと思うので。

今回、渚ちゃんはオーディションで決まり、私よりもはるかに若くて。
今までと逆の立場になった私が、共演した時に何を与えられるかな? と不安もありました。

ただ「浜村渚の計算ノート」はエンターテイメントとしてすごく面白い作品です。
ザ・ファミリーミュージカルというものに挑戦するのが初めてなので、幅広い年代の方に見ていただく事が、自分にとってすごく新しくて面白いなと楽しみです。

不安と期待が入り混じった感じでした。

井上小百合

推:演じられる役なのですが、どんな人物なのでしょうか?
どういう人物像になっていくのかは、まだこれからお稽古で変わっていくかもしれないのですけど。
彼女自身も才女で、もしかしたら渚ちゃんと数学好き同士で仲良くなれる存在だったかもしれないけど、彼女が悪の組織に加わってしまったって背景があって。
自分のやりたい道に行けなかった “政府への恨み” みたいなのが、正義感と入り混じって悪に加担させてしまったが、彼女自身はすごくいい子だったのではないかと、私の中で今は解釈しています。

一見すると悪だし、テロ組織の一員だけど、お客さんに共感してもらえるような。
悪側も、渚ちゃん側も、みんなが繋がれる「数学」というのが真ん中にあるので、楽しく見てもらえるように頑張りたいなと思ってます。

推:キューティー・オイラーと自分が似ていると思った点はありますか?
「曲がったことが許せない」みたいな感覚は自分と似ているのかなと思ってます。すごく真っ直ぐというか。
彼女の道は、そのまま無難にやっていれば進めたと思うのですが、論文を書いた事により阻まれてしまい……
政府が許せなかったから「私は悪の組織に加担して倒すぞ!」みたいな、一貫した強さと言いますか、「許せないことは許せない」点は自分と似ているような気がしてますね。

推:逆に、この役は私と全然違うなと思った点はありますか?
うーん。 悪役ですけど、ポップでキュートなキャラクターで、原作でも人気が高かったりするので、なんかその辺は私とは違うのかな?
どちらかというと、私は結構男勝りに育ってきたタイプで、そんな可愛らしい部分は私の中には無い気がしているので(笑)

井上小百合

 

学生時代を振りかえってみると

推:「浜村渚の計算ノート」は理系の科目が外される。というところから物語が始まるじゃないですか。
思い返してみて実際に学生時代に得意だった科目ってありますか?

「意外だ」って言われそうなんですけど、体育が好きで、あと音楽も好きでしたね。
あと図画工作とか?

5教科以外が好きで、自分で何かを表現したり、みんなで協力して何かをやったり、そういうのに楽しさを覚えていました。

テキストの中で決まった答えがあって、決まったものをやるのがすごく苦手なタイプでしたね。

推:何年にナントカ憲法とか?
そうですね。

推:この方程式に当てはめたりとか。
あーもう、わーーってなります(笑)

推:ということは、苦手だったのはそういう、ザ勉強系ですか?
はい(笑)

井上小百合

推:学生の時に、もし自分が外す側の立場で、苦手なものを一個外せるって言ったら何を外してたと思いますか?
ええ~、なんだろう? 国語理科社会……
何だろうな? う~ん。

推:それだけ悩むということは、実はそこまで苦手なものは無かったのですかね?
好きだった教科は体育とか音楽でしたけど、実はそんなに苦手なものはなかったかもしれないです。
やればできるタイプ?

推:やればできるタイプは頭がいい人ですよ!
いやいやいや。でも全然やらないんですよ。基本やらないので(笑)

推:学生時代のやる気スイッチが入ってない状態の時に、『浜村渚の計算ノート』を見たら何か変わったりしてたと思いますか?
思います!数学を好きになっていたと思います。

なんか数学って、枠組みが定められている感じがして。方程式とか計算式とか決められたものをきっちりやらないと答えにたどり着けないっていうのがすごく苦手で。

「たけし君が家から出発して、その後に田中君が後を追いました。2人が交わる時間はいつでしょう?」みたいな。
そんなの、たけし君と田中君のサジ加減じゃん!なんで決めるの?みたいな(笑)

その感じが当時の私にはハマらなかったんですけど、『浜村渚の計算ノート』を読んだ時に、枠組じゃなくてもっと自由な感じがして。
数学ってすごく色々な可能性を秘めているんだな っていう感覚になれたので、もっとそういう感覚を知っていれば、たけし君とか田中君とかと仲良くなれたかもしれないなと思います。

推:「数学嫌だな」と思っている今の中高生が見ると考え方が変わるかもしれないですね。
そういう影響を与えられたらいいですね。舞台を見て、「数学に興味を持って点数が良くなった!」とかなったら、すごく嬉しいです!!

 

『浜村渚の計算ノート』のポイント

推:今回の舞台の中で、個人的にすごく楽しみなポイントはありますか?
やっぱり、桑原愛佳ちゃんが演じる渚ちゃんの歌です。
愛佳ちゃんの歌は、製作発表の際もちょっと聞きましたけど、すごく心にスッと入ってくる透明感と強さがあります。

私も、自分の好きなものや夢を追求することへの勇気を与えることができたら素敵だなと思っています。

推:井上さんのファンの方で「井上さんを見にきたよ」って人には、観て欲しいポイントはどこですか?
まず衣裳が、すごくかわいらしいです!
なかなか、ああいう格好をしているところは見たことがないと思うので、まずそこで新しい井上小百合を楽しめるのではないかなと思います。
悪役でも、キューティーちゃんという可愛らしいキャラクターっていうのは、すごく新しい感じがしてるので、そのへんの私を楽しんでもらえたらなと思っています。

井上小百合

推:最後に今回の舞台にかける意気込みをいただけますか?
私は、大人から子供まで楽しめる作品に参加するのが初めてなので、皆さんに楽しんでもらえるようなキャラクターになっていけたらいいなと思っています。

歌とダンスと数学と色々なものが合わさっているので、本当に様々な楽しみ方ができる作品だと思います。
ミュージカルとしてもエンターテイメントとしても素敵なものを届けたいなと思っているので、ぜひ劇場で体感していただけたら嬉しいです。

 

浜村渚の計算ノート

原作:青柳碧人「浜村渚の計算ノート」(講談社文庫刊)
脚色・脚本・演出:植木護 作曲・音楽監督:松田純一 
出演:桑原愛佳 / 立石俊樹、藤岡真威人、飯窪春菜、隅田美保、入来茉里、藤岡舞衣、西條妃華
/ 井上小百合、レ・ロマネスクTOBI、朝隈濯朗、ダイアモンド☆ユカイ 他

 
©青柳 碧人・講談社/ミュージカル『浜村渚の計算ノート』製作委員会

井上小百合
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