夏を齧る、春が尾を引く、いま聴きたいプレイリスト (ツクヨミケイコ 著)

渋谷や新宿に毎日のように繰り出すわたしは、満開になった頃にやっと 桜が咲く時期であることに気がつきました。

ただでさえ大人になればなるほど時の流れを早く感じるというのに、桜が咲いている期間なんてあまりにも短くて毎年もどかしくなります。
いろいろな節目を迎えたあと、春と夏の隙間、梅雨の始まりを待ついま みなさまいかがお過ごしですか?

終わりと始まりが交錯する機会が 一年の中で一番多いであろう3月と4月が絶妙に過ぎ去ったいま、わたしが聴きたい、聴いている、そして聴いて欲しい音楽を集めました。

テキスト:ツクヨミケイコ

ツクヨミケイコ

 

青い栞 / Galileo Galilei

《まだ二人はすぐそこにいるのに「どうかまた会えますように」なんて どうかしてるみたい》

わたしの思う春の青色は淡い青色。そしてわたしの思うこの曲の青色は淡くて少しくすんでいて、 曇り空のような青色。青春のもやもやと、この季節のもやもやはどこか似ているような気がし て、いまにきっと馴染む曲。

青春なんてその真っ只中にいるときは 必死すぎたり楽しすぎたり苦しすぎたりするからきっと気 が付くことはできなくて、やっと気が付いた時にはきっともう過ぎ去った後なんだろう。でも過 ぎたからこそ美しく思い出せるのかもしれない。

美しくて儚くて優しくて胸がきゅっとなる、時を感じるミュージックビデオも大好きな作品。

 

ここにある光 / Art Building feat. わかまつごう

《自虐などではなく 卑下するでもなく 自分の小ささを認めたい》

SNSでファンの方に「強く生きるってなんだと思いますか」と聞かれたとき「自分の強さと弱さ をちゃんと理解して向き合って生きること」と答えたのを、我ながら随分と気に入っている。

烏滸おこがましいけれど、図々しいけれど、そんなわたしの答えを歌にしてくれたような一曲だと勝手 に思ってしまっている。 歌詞にこの季節を思わせる単語は《こんなに春が咲いているのに》の『春』だけなのだけれど、 鳴る音、並んだ言葉、それらすベてのあたたかさのおかげで 春の匂いのする一曲。

カップリング の『あの頃の春』と合わせて、いまこの季節に何回だってリピートしたくなる音楽。

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5月の呪い / おいしくるメロンパン

《億劫で仕方ないんだ なにをするにも なにもしないことも》

おいしくるメロンパン

春と呼ぶには暑いし、夏と呼ぶには物足りない5月、そんな曖昧さ。爽やかで軽快で晴れ晴れとし たサウンドに乗せられる、鬱々とした思い。穏やかなはずなのにどこか沈んでいて、でもそれを 黒と呼ぶには大袈裟な、5月の灰色を歌う一曲。起承転結すらも曖昧なのが現実的で心地良い。

こんな気持ちになるのはわたしだけじゃないんだ、ああよかった、それならまあいっか、と安心させてくれて気持ちがふわっと少し軽くなるような感覚。

ダークさわやかスリーピースギターロックバンド おいしくるメロンパンの音楽は、国語の教科書 にも音楽の教科書にも載っていなかった音や言葉、表現すべてがあまりにも心地よくてずるいの だ。こんなのわたしが好きになってしまうに決まってる。

 

ピンヒールサーファー / SCANDAL

《いい波も悪い波も自分で決められるの 世界を楽しめ》

がんばりたいすべての女の子たちへ。女の子なんて常に面倒くさい生き物で、その上その自覚も あって、なんなら自分ですら自分のことを面倒くさいと思ってしまうほどで、でもそれを辞める ことなんてできなくて。

がんばりたいときもがんばりたくないときもあって、がんばれと言って欲しいときもがんばらなくていいよと言って欲しいときも、何も言わないでそばにいて欲しいとき も放っておいて欲しいときもあって。

この曲は、がんばりたい日の女の子に聴いて欲しい一曲。 か弱くて儚くて守ってあげたい女の子もいいけれど、自分ウケ優先のメイクをして、お気に入りの お洋服を身に纏っちゃったりなんかして、BPMに合わせててきぱき歩いて、誰にも邪魔させない、デキる女になりきって生きてやろうね。

 

バードマン / SEKAI NO OWARI

《頑張れたらそうしたいよ こんなとこで道草食ってるけど》

SEKAI NO OWARI

学生の頃に聴いていたラジオ番組で、SEKAI NO OWARIが話してくれた「学校に行かないことだって勇気だ」の言葉にすごくすごく救われたことを、未だに思い出してはまた救われるくらいよく覚えている。

わたしの人生で初めて、頑張れないことを肯定してくれた存在。
頑張らない勇気がなくて頑張ることしかできないのも、頑張りたいのにうまく頑張れないのも、全部今日のためだったんだといつか言えるかもしれない。
本当にそうなのかは分からないけれど、そう思わせてくれるような曲。

一人じゃないよという直接的な言葉も良いけれど、一人じゃないよと直接的に言わずとも思わせてくれる音楽こそ、やるせない孤独感を感じたとき、本当に欲しいものなのかもしれない。

 

シャニムニマーチ / SOMOSOMO

《教えられた愛 水やり花咲かすのがカギ》

SOMOSOMO

1年ほど前に開催したわたしたちの2ndワンマンライブ『To be tried』で初披露、しかもセット リストの1曲目にぶち込んだ、ひたすら明るくて楽しい曲。
ライブで披露したとき初めてこの曲を聴いた人に「あの曲良かった!なんていう曲?」と聞かれるランキング1位。だと個人的に思っている。

冒頭から突然メンバー全員でキーンコーンカーンコーンって歌う歌、元気にならないわけ、なくない? ころころ変わる歌割りの忙しなさがお気に入り。

SOMOSOMOの全曲メンバー作詞の音楽たちは、ポップなメロディーに乗せられて忘れられがちなのかもしれないけれど 実は結構いいことを歌っていたりする。そこがまたお気に入り。無理矢理にでも元気になりたい時に聴いてね。

 

おわりに

卒業、入学、別れ、出会い、3月、4月、新生活。終わりや始まりを歌う歌はいくらでも思い当たるのに、この絶妙な時期の音楽と考えると なんだか難しくて驚きました。
言葉にできない、はっきりしない、なんとも言えない、もどかしい時期。誰かに話すほどでもない、話すとしてもどう 話していいか分からないような日々。

誰しもが必ずこんな気分になる、とは限らないと思うのだけれど、ただわたしの愛する音楽たちがわたしだけではなく「わたし以外の誰かにも寄り添ってくれたらいいな」という気持ちです。

 

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